
レスポンスとサウンドは、どうつくられたのか。
前回の「LEXUS RC-F の 2UR とは #01」では、LEXUS RC Fに搭載される5.0L V8自然吸気エンジン「2UR-GSE」について、その成り立ちを振り返りました。
IS Fから受け継がれ、RC Fのためにさらに進化した2UR-GSE。
ヤマハ発動機の技報を読み解いていくと、このエンジンが単に最高出力を追求して開発されたものではないことが分かります。
開発において大切にされたのが、
「サウンド」
「レスポンス」
「伸び感」
という、人がクルマを運転したときに感じる「官能性能」でした。
では、その感覚はどのようにつくられたのでしょうか。
RC Fのアクセルを踏んだときに感じる反応。
そして、回転数とともに変化していく5.0L V8のサウンド。
今回は、2UR-GSEの「レスポンス」と「サウンド」に焦点を当て、その中身をもう少し深く見ていきます。
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レスポンスのために「小さくした」部分もある。
RC Fの2UR-GSEで面白いのが、吸気系の設計です。
IS FからRC Fへの進化にあたり、高出力化に対応するため、スロットル径はφ76mmからφ83mmへ大型化されています。
より多くの空気をエンジンへ取り込むためには、空気の通り道を広げる。
ここまでは、比較的分かりやすい話です。
しかし、その一方で、スロットルから吸気バルブまでの容積は、IS Fに対して約10%小さくされています。
入口は大きくする。
その先は小さくする。
一見すると、相反する設計のようにも見えます。
その理由のひとつが「レスポンス」です。
アクセルを踏み、スロットルが開いてから、実際にシリンダーへ空気が取り込まれる。
ドライバーが感じるエンジンの反応には、このわずかな過程も影響します。
吸気系の容積が大きくなれば、そこを満たすために必要な空気量も増える。
そこでRC Fでは、大径スロットルによって必要な吸入空気量を確保しながら、その下流側の容積を抑えることでレスポンスとの両立を図っています。
ただ大きくして、たくさんの空気を通せばいいわけではない。
必要なところは大きくし、必要なところは小さくする。
RC Fのアクセルレスポンスは、電子制御だけによってつくられたものではありません。
ドライバーがアクセルを踏んだとき、エンジンがどう応えるのか。
その感覚から逆算するように、吸気系そのものが設計されているのです。
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5.0L V8のサウンドも、偶然ではない。
そして、RC Fと2UR-GSEを語るうえで外すことのできないものがあります。
「音」です。
RC Fに乗り、アクセルを深く踏み込んでいく。
エンジン回転数の上昇とともに、それまでとは違ったV8サウンドが車内へ入ってくる。
5.0L自然吸気V8だから、良い音がする。
もちろん、それもひとつの要素でしょう。
しかし、ヤマハ発動機の技報を読み進めると、RC Fのサウンドもまた、意図してつくられた性能のひとつであることが見えてきます。
エンジンの音には、燃焼音や排気音だけでなく、吸気によって発生する音も大きく関係しています。
そして吸気管の長さや太さ、容積、配置によって、特定の回転域で共振が発生します。
共振そのものが悪いわけではありません。
しかし、強い共振がいくつも重なると、音に濁りが生じ、エンジン回転の上昇とサウンドの変化がきれいにつながらなくなることがあります。
RC Fでは、IS Fの開発で得られた知見をもとに、そうした共振域を少なくする吸気レイアウトが採用されました。
目指したのは、ただ大きな音ではありません。
エンジン回転の上昇とともに、音も自然に、そしてリニアに変化していくこと。
ドライバーがアクセルを踏み込み、2UR-GSEが高回転へ向かっていく。
その「伸び」と「音」が、ひとつの感覚としてつながるように設計されているのです。
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吸気だけではなく、排気まで。
もちろん、RC FのV8サウンドをつくっているのは吸気だけではありません。
排気側にも手が入っています。
RC Fの2UR-GSEでは、エキゾーストマニホールドにセミデュアル構造を採用。
各シリンダーから排出された排気ガスが互いに干渉することを抑え、排気効率の向上が図られています。
エンジンは、空気を吸い、燃料を燃やし、排気することで力を生みます。
だからこそ、吸気だけを変えても、排気だけを変えても、本来求めているフィーリングにはならない。
空気が入る。
燃焼する。
そして排出される。
その一連の流れをひとつのものとしてつくり込む。
それが、RC Fの2UR-GSEです。
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「サウンド」と「レスポンス」は、別々ではない。
ここまでヤマハ発動機の技術資料を読み解いていくと、ひとつ興味深いことに気付きます。
「サウンド」と「レスポンス」は、それぞれ独立した性能ではないということです。
アクセルを踏む。
エンジンが反応する。
回転数が上がる。
それに合わせて音が変わっていく。
そして、さらに高回転へ伸びていく。
ドライバーが「気持ちいい」と感じる瞬間には、それらが同時に起きています。
だからこそ2UR-GSEでは、最高出力というひとつの数字だけではなく、「サウンド」「レスポンス」「伸び感」という感覚そのものが開発目標として掲げられました。
RC Fが登場してから10年以上。
電動化が進み、モーターによる瞬間的なレスポンスを持つクルマも珍しくなくなりました。
それでもRC Fのアクセルを踏んだときに感じるものは、それとは少し違います。
5.0L自然吸気V8が空気を吸い込み、燃焼し、回転を上げ、その結果として音が変化していく。
ドライバーの操作と、エンジンの中で起きていることがつながっている。
それこそが、今改めて2UR-GSEを知る面白さなのかもしれません。
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次回、さらに2UR-GSEの中へ。
ここまで見てきたのは、RC Fが持つ「レスポンス」と「サウンド」のつくり方です。
しかし、2UR-GSEの進化はこれだけではありません。
IS FからRC Fへ。
同じ「2UR-GSE」というエンジン型式を受け継ぎながら、圧縮比、バルブ、燃料噴射、冷却、クランクシャフト、コンロッドなど、その内部にはさまざまな変更が加えられています。
なぜ、そこまで手を入れる必要があったのか。
その答えにつながるのが、もうひとつのキーワード。
「伸び感」です。
次回の「LEXUS RC-F の 2UR とは #03」では、最高出力発生回転数を7,100rpmまで引き上げたRC Fの2UR-GSEについて、高回転まで伸びていく5.0L自然吸気V8を支える技術を掘り下げていきます。
そして、その先ではサーキット走行を想定した冷却・潤滑への対策や、D-4S、VVT-iE、アトキンソンサイクルといった、一見するとハイパフォーマンスとは違う方向にも見える技術についても見ていきます。
「2UR-GSE」という一つのエンジンを知っていくと、RC Fというクルマの見え方も少しずつ変わってきます。
LEXUS RC-F の 2UR とは、
まだ、話は続きます。
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