
サーキットを走るための2UR-GSE。
前回の「LEXUS RC Fの2URとは #02」では、RC Fに搭載される5.0L V8自然吸気エンジン「2UR-GSE」のレスポンスとサウンドについて紹介しました。
大径化されたスロットル。
その一方で、レスポンスを高めるために小さくされた吸気系の容積。
そして、エンジン回転の上昇とともにサウンドが自然に変化していくようにつくられた吸気・排気系。
こうして見ていくと、2UR-GSEが最高出力だけではなく、ドライバーがどう感じるかというところまで考えて開発されたエンジンであることが分かります。
しかし、RC Fはそれだけではありません。
5.0L V8を高回転まで回し、その性能をサーキットでも使う。
そのためには、「パワーを出す」こととは別の技術が必要になります。
今回は、RC Fの2UR-GSEに施された、サーキット走行を支えるための技術を見ていきます。
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高性能であることと、使い続けられること。
一般道でアクセルを踏み込む時間は、ほんの数秒です。
しかし、サーキットでは状況が大きく変わります。
加速し、高回転までエンジンを回し、減速する。
そして、再び加速する。
これを繰り返します。
エンジンにとっては、高い回転数と大きな負荷が繰り返しかかる環境です。
さらにコーナリングやブレーキングによって、車体には前後左右から大きなGが加わります。
つまりサーキットを走るエンジンには、瞬間的に大きなパワーを出せることだけではなく、
その性能を安定して使い続けられること。
これが重要になります。
RC Fの2UR-GSEでは、そのための変更も数多く行われています。
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2UR-GSEを「冷やす」。
そのひとつが、エンジンオイルの冷却です。
エンジンオイルには、エンジン内部の金属部品を潤滑するだけでなく、内部で発生した熱を受け取り、運び出す役割もあります。
当然、高回転・高負荷で走り続ければ、油温も上昇します。
IS Fの2UR-GSEには、すでに水冷式のオイルクーラーが採用されていました。
RC Fでは、それに加えて新たに空冷式オイルクーラーを追加しています。
水冷式だけではなく、走行風を利用する空冷式も組み合わせる。
ヤマハ発動機の技報では、この変更について「サーキット走行対応強化」を目的としたものとして紹介されています。
RC Fのフロントバンパーの奥にある冷却系も、単に5.0L V8を冷やしているだけではありません。
サーキットという高負荷環境でも2UR-GSEの性能を維持するための、重要な部分なのです。
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コーナーを曲がっている間も、オイルを送り続ける。
サーキット走行では、もうひとつ普段の走行とは違うことが起こります。
クルマに大きなGがかかることです。
高速でコーナーへ入れば、車体には強い横Gがかかります。
ブレーキングでは前方向へ、加速時には後方へ。
そして、その影響を受けるのはエンジンオイルも同じです。
オイルパンの中に溜まっているオイルも、車体に加わるGによって大きく移動しようとします。
もしオイルが一方向へ偏り、オイルポンプが十分に吸い上げられなくなれば、エンジン内部へ安定してオイルを供給することが難しくなります。
そこでRC Fでは、オイルパン内部のバッフルプレートを改良しています。
バッフルプレートは、オイルパン内部でオイルが必要以上に移動することを抑えるためのものです。
外から見える部品ではありません。
馬力が上がる部品でもありません。
しかし、高い横Gがかかる状況でも2UR-GSEへ安定してオイルを供給するためには、こうした部分が重要になります。
「サーキットを走れるエンジン」をつくるということは、こういうところまで考えることなのです。
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クランクシャフトまで見直された。
RC Fでは、エンジンの中心にあるクランクシャフトにも変更が加えられています。
クランクシャフトは、ピストンの上下運動を回転運動へ変換する、エンジンの中心ともいえる部品です。
5.0L V8の8つのピストンから受ける力を受け止めながら、高速で回転し続けます。
RC Fでは高回転化に対応するため、クランクピン径やカウンターウェイトなどを見直しています。
さらにコンロッドにも高強度の鍛造材を採用。
最高出力が上がるということは、それを生み出すエンジン内部の部品にかかる負荷も大きくなるということです。
しかもRC Fでは、その状態を一瞬だけ使うのではなく、サーキットで繰り返し使うことまで考えなければなりません。
だからこそ、吸気や燃焼だけではなく、エンジンの土台となる部分にも手が入っています。
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「477PSを出す」だけではない。
RC Fのスペックを見ると、どうしても目に入るのは、
5.0L V8。
477PS。
7,100rpm。
といった数字です。
しかし、ヤマハ発動機の技報を読み進めていくと、2UR-GSEというエンジンの面白さは、その数字だけではないことが分かります。
空冷式オイルクーラー。
オイルパン内部のバッフルプレート。
クランクシャフト。
コンロッド。
どれも、RC Fを外から眺めていて見えるものではありません。
そして、アクセルを一度踏んだだけでは、その存在を意識することもほとんどないでしょう。
それでも、サーキットで何度も高回転までエンジンを回す。
強くブレーキを踏む。
大きな横Gを受けながらコーナーを抜ける。
そして、またアクセルを踏む。
その繰り返しを成立させるためには、こうした見えない部分が重要になります。
高性能なエンジンをつくること。
そして、
その高性能を使い続けられるエンジンをつくること。
似ているようで、この二つは少し違います。
RC Fの2UR-GSEには、その両方が求められていました。
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街を走れることも、RC Fの性能。
ここまでサーキット走行について見てきましたが、RC Fの面白さは、サーキット専用車ではないことにもあります。
エアコンを効かせて街を走る。
高速道路を使って長距離を移動する。
そして、そのままサーキットへ持ち込むこともできる。
LEXUSとして求められる快適性や扱いやすさを持ちながら、そのエンジンの内部には高負荷で走り続けるための技術が組み込まれている。
RC Fを中古車として探していると、年式や走行距離、装備などに目が行きます。
もちろん、それらも大切です。
しかし、RC Fというクルマがそもそもどのような思想でつくられていたのかを知ってから車両を見ると、少し見え方が変わってくるのではないでしょうか。
5.0L自然吸気V8を搭載したラグジュアリークーペ。
それだけではない。
サーキットで使うところまで考えてつくられた5.0L V8。
それが、RC Fに搭載された2UR-GSEのもうひとつの姿です。
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